Archive for 2月, 2012

ミシェル・カイヨー (Michel Caillaud)

 

Michel Caillaud
1957年生まれ(現在54歳)、フランスのプロブレム作家・解答者。36歳でプロブレム創作の最年少GMになるという記録を樹立。おそらくは現役で世界最高のプロブレム作家と呼んでも過言ではない。スタディ以外のあらゆるジャンルをこなす万能作家だが、特に有名なのはProof Gameを中心とした「レトロ」の分野である。

 

 

 

 

 

 

 

 

(©Vito Rallo)

 

ここでは、レトロ、ヘルプメイト、セルフメイトのジャンルからそれぞれ1局ずつ、比較的軽いものを紹介する。まず一度、自分で取り組んでみてほしい。

Caillaud Retro

 

 

 

問題設定は、g2にいた白のポーンがどういう軌跡をたどったかを問うもの。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ロジックはシンプルでエレガントである。

 

 

 

 

 

 

 

 

問題設定は、2手でヘルプメイト、解は3つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、解が3つあるということから、あなたは何を想像しますか?

 

 

 

 

 

 

 

 

問題設定は、7手でセルフメイト。セルフメイトとは、白から指しはじめ、白のキングがチェックメイトになるような手順を求めるもの。ただし、黒は抵抗する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「S#7」に付いている星印は、黒から指しはじめる、いわゆる「セット・プレイ」(set play)もおまけに付いていることを意味する。この場合だと、もし黒の手番なら、1…exf2≠でいきなりチェックメイト(黒にはこの手しか指せる手がないことに注意)。だったら、白番で初手に白が手待ちしてやれば、今の順で1手でセルフメイトできるんじゃないか……と思いませんか。実は、それがうまく行かない。たとえば1.Ba5?なら1…Kc5!と逃げ道ができてしまう。いちばん良さそうな1.Rd2?でも、1…exf2+のときに2.Rxf2と取り返す手ができてしまい、失敗する。

さあそれでは、どんな手段が残っているのか?

(若島正)

 

チェス・プロブレムの揺籃期で、現在のチェス・プロブレムに比較的近いと思われる作品は、13世紀に作られたとされる次のようなものです。

 

 

正解は1.Rhg7!(h7にいるRをg7に動かす、という意味)です。

この手は、放っておくと次にメイトにするよ、という手ではありません。しかし、黒は手番が渡されたので、何か指さないといけません。

キングを動かす手は、

1…Kc8 2.Ra8≠

1…Ke8 2.Rg8≠

そしてナイトを動かす手は

1…Sb7 2.Ra8≠

1…Sf7 2.Rg8≠

です。この2つめの変化に注目してください。たとえば白が初手に1.Kc2?とでも指して手待ちをすれば、1…Sf7!とされて詰まなくなるのです(2.Rh8+だとSxh8!と取られてしまいます)。

ナイトを他の場所に移動しても、白の次の手で詰むことは各自ご確認ください。

 

この問題では、明らかに第1回で紹介した最古のプロブレムとは違って、「白勝ち」という終盤問題ではありません。しかも、「2手でメイトにする」という制約によって初手の正解(キーと呼びます)が1つに定まっており、さらに黒はチェス用語で言うところのzugzwang(ツークツワンク、すなわちそのままならメイトはないが、手番が与えられているために不利な手を指すことを強制され、そのせいでチェックメイトにされるという状況)になっている点など、現代にも通用する要素を持っています。

また、この問題のキーは、チェックをかける手ではないことに注意しておきましょう。「チェックをかけつづけなければ仕方がない」という作り方は、可能な手の数を極端にせばめてしまうため、チェス・プロブレムが発展する可能性の足かせになっていました。チェックをかける手よりも、むしろチェックをかけない静かな手の方が、手として優れているという価値観が確立したのは、実は19世紀というずっと後になってからのことなのです。

チェス・プロブレムは詰将棋と比べて、はるかに手数が短く設定されています。たとえばMate in 2なら、詰将棋式に換算するとわずか3手詰なのですが、それでは作品の奥行きという点で詰将棋の3手詰にほぼ等しいのかと言えば、まったくそうではありません。それはよくある誤解でしかありません。詰将棋で言えば15手詰くらいの奥行き、というのがわたしの実感です。どうしてそうなるのかと言えば、「チェック(=王手)をかけなくていい」というこの自由度のために、解答者が考えなくてはならない可能な手の数が飛躍的に増大しているからです。

この度第55回チェスプロブレム世界大会&第36回チェスプロブレム世界解答選手権実行委員会では、チェスプロブレム世界大会を日本で開催する事にともない、寄付金をお願いすることになりました。

この世界大会は、チェスプロブレムの愛好家が文字どおり世界中から毎年200人ほど集まってチェスプロブレムを楽しむ大規模なもので、会場費などの見積もりでは、5,000,000円ほどの総経費になる見込みです。多少の自己資金、各種団体からの援助金、そして参加者から徴収することになる参加費を合わせても、2,000,000円ほど不足することになり、その捻出が必要になります。参加費を値上げすることは、参加者が支払う高い航空運賃を考えると、できるかぎり避けたいと思っています。そこで、皆様にご寄付をお願いするような次第です。

寄付金は一口10,000円でございます。もちろん、何口お送りいただいても結構です。本趣旨に対し何分のご配慮を賜り宜しくご寄付いただければ幸いと存じます。世界中から多くの参加者が日本に来ていただけるように、是非ご協力下さい。

なお、ご寄付いただきました方には、大会終了時に製作配布される冊子にご芳名を記させていただきますとともに、その冊子を1部お送りさせていただきます。

本趣旨にご賛同いただけます場合は、下記のゆうちょ銀行口座宛、振込にてご送金下さい。

○名義:第55回チェスプロブレム世界大会&第36回チェスプロブレム世界解答選手権実行委員会 ○記号:14340 ○口座番号:35260151

他行からの振込の場合の口座番号

○店名:四三八 ○店番:438 ○普通預金 ○口座番号:3526015

 

第55回チェスプロブレム世界大会実行委員長 若島正

世界最古のチェス・プロブレムは、紀元840年頃の、次の作品だとされています。

ここでMate in 3とは、「3手で黒のキングをメイトにせよ」という指定です。これは、さらにくわしく言えば、「白から指し始めて、白の3手目で黒のキングをメイトにせよ」ということで、詰将棋式に数えれば5手詰に等しくなります。ただし、詰将棋のように、「必ず王手をかける」という制約はありません。

問題図の上に付いている情報は、作者名、そして発表場所と発表年を表しています。

 

figure1

 

正解:1.Sh5+ Rxh5 2.Rxg6+ Kxg6 3.Re6≠

(なお、チェス・プロブレムでは、ナイトをNではなくSと表記するのが習わしになっています。さらに、通例では、チェックは+、チェックメイトは≠で表記します。)

 

これはフィレンツェの国立図書館が所蔵している写本に見られる図です。

ただ、ここで注意していただきたいのは、当時にはまだ現在のようなチェス・プロブレムにおけるオーソドックス(すなわち、何手でメイトにせよという形式)がありませんでした。ですから、問題そのものは「白先で白勝ちにせよ」という実戦の終盤問題、つまりエンドゲームと等しくなっています。

この図だと、白のキングにはほぼ将棋で言うところの必至がかかっています。必然、白勝ちにするためにはチェックをかけつづけて、最後にはチェックメイトにするしかありません。つまり、チェス・プロブレムには最初から、「白は必ずチェックをかけなくてはいけない」という、詰将棋的な王手連続の規則というものはありませんでした。この問題のように、結果としてチェックの連続になっているのは、チェックをかけないととたんに可能性が増大して、作者の読みの限界からはみだしてしまうからです。

このような、言ってみれば詰将棋に近い路線は、この最初の作品が誕生してから、なんと約1000年も続くことになります。そして、そのあいだ、チェス・プロブレムには進歩らしい進歩が見られませんでした。

ブログ設置しました。
チェスプロブレム世界大会準備委員会から発信していきます。
ご期待ください。