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はてなブックマーク - 日本にやってくるプロブレム作家たち(2)解答篇
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日本にやってくるプロブレム作家たち(2)解答篇WCCC2012Kobe

―問題篇より続きます―

 

 

ヒントに書いたとおり、まず1.Bb7および1.Ba6とすればどうなるかを検討してみる。

1.Bb7は次に2.Be4≠とメイトにする狙いを持っている。このように、放置すればこんな順で詰ますよという、詰将棋で言えば「詰めろ」に相当する狙い筋のことを、専門用語で「スレット」(threat) と呼ぶ。これに対して黒は1…e1=Qと受ける。白にはこれ以上手がなく、失敗。

それでは、1.Ba6はどうだろうか。これは次に2.Bd3≠というスレットを持っている。それを受ける手は1…e1=Sだ。

ここで、黒の1枚のポーンが1…e1=Qおよび1…e1=Sと、クィーンおよびナイトに成る順が現れた。このような黒の受けを「ホルストのテーマ」(Holst theme) と言う。ホルストのテーマは、ドイツ論理派が好んで用いたもので、とりわけオーストリアの作家Alois Johandl が得意にしたことでも知られる。

さて、1.Ba6に対して1…e1=Sと書いたが、実はそれだと2.Bb7と戻られて、3.Be5≠のスレットを狙われると、今度は本当に受けがない。そこで、黒にはもう少しひねった受けがある。1.Ba6に1…Sb5!と捨てるのがそれだ。2.Bxb5と取るよりなく、そこで2…e1=S!とすれば、白は3.Bc6(4.Be4≠)と指すことになる。このとき、白のビショップがb6のルークの利きを遮断してしまったので、黒は3…Kxe6!と逃げ出せる。以下、4.Be4+ Kf7となって、もう詰みはない。

このように、ある駒がXの地点に来る順があるとき、相手がその駒をXよりも劣った地点Yに誘い出すような手筋のことを、通称「ローマン」(Roman) と呼ぶ。これは普通、黒の駒をおびきだすときの白の手筋について使われるが、逆に白の駒をおびきだすときの黒の手筋はWhite Romanと呼ばれる。この作品の場合なら、X=b7, Y=c6となっているWhite Romanである。

最初に戻って、1.Ba6?といきなり指すのは1…Sb5! (White Roman)と2…e1=S (Holst) の組み合わせで逃れることがわかった。そこで白は、そうした逃れ順に対抗する、伏線を前もってかけておく。これが専門用語で「フォアプラン」(foreplan) と呼ばれるものである。それに対して、先ほどの1.Ba6?以下の順は、「メインプラン」(mainplan) と呼ばれる。すなわち、メインプランが成立するように前もってフォアプランを仕掛けておくのである。この発想は、詰将棋における伏線と基本的に同じだ。

正しいキーは1.g3!!。これが妙手。一見すると何が狙いかわからないかもしれないが、実は放置すると2.Sxg7+ Kg5 3.Sh3+ Kh6 4.Sf5≠というスレットが付いている。このスレットは、たとえ1…e1=Qと来ても関係なく成立する。

黒には受けがなさそうに見える(1…h4とh5の遁路を作れば2.g4≠)が、1…Rf7が唯一の受け。これは先ほどのスレットで、最後の4.Sf5+のときに4…Rxf5!と取り返す手を残したものである。

この1手のやりとりで、黒のルークがf7に移動したわけだ。この伏線(フォアプラン)を行なってから、すでに調べた本手順(メインプラン)に入ればどうなるか。

2.Ba6 Sb5 3.Bxb5 e1=S 4.Bc6 Kxe6 と進めば、もうおわかりだろう。f7の地点が黒のルークで塞がっている(これをセルフブロックself-blockと呼ぶ)から、5.Be4≠でチェックメイト! これが伏線を掛けた効果だったわけだ。

解説が長くなったので、もう一度手順をまとめてみよう。

 

(mainplan) 1.Ba6? Sb5! 2.Bxb5 e1=S 3.Bc6 Kxe6 4.Be4+ Kf7!

(foreplan) 1.g3!! (2.Sxg7+ Kg5 3.Sh3+ Kh6 4.Sf5≠) 1…Rf7

2.Ba6! Sb5 3.Bxb5 e1=S 4.Bc6 (5.Be4≠) Kxe6 5.Be4#

 

ドイツ論理派独特の濃厚な論理性を、比較的にスマートな形で描き出した佳作。伏線の掛け方が、1.g3!!という静かな手であるのも好ましい。

 

 

a) 1.Bf6! Be1! 2.Se5 Kd4 3.Rh5 Ke3 4.Bg5+ Kf2 5.Kh4 Kg2≠

b) 1.Bh2! Bd8! 2.Kg3 Kd6 3.Rh3 Ke7 4.Kh4 Kf6 5.Bg3 Kg6≠


白のビショップ1枚でメイト形を作るときの常套手段は、ビショップのラインに白のキングをはさみ、最後に開き王手で詰めるという筋である。この開き王手ができる形をバッテリー(battery)と呼び、とりわけキングをはさんでいる形をロイヤル・バッテリー (royal battery) と言う。

ここでは、そのロイヤル・バッテリーを上下2つでやろうというのが狙い。普通だと、この2つの解にはそれ以上の統一性を入れにくいところだが、ここでは黒がまず初手でビショップを移動して、そのビショップのラインを2手目に自ら遮る (2.Se5および2.Kg3) ことにより、白キングの進路を保証するというところで統一性を図っている点に注目してほしい。

記憶に残る作品。

(若島正)

 

One Response to “日本にやってくるプロブレム作家たち(2)解答篇”

  • admin より:

    手順に何箇所か誤記があり、訂正いたしました。
    Suzuki様、大阪在住将棋ファン様、umayabara様、ご指摘ありがとうございました。

    …いただいたコメントを見落としていました。訂正が遅れたことをお詫びします。
    (ブログ担当 山田嘉則)

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